エコーガイド下注射と手術

エコーを使った手術について説明します。

エコーの利点は?

エコーと聞いてみなさん一番なじみがあるのが妊婦さんに行われる胎児エコーではないでしょうか。放射線への被爆がなくお腹の中の赤ちゃんの状態を観察できます。

筋肉や骨をみるエコーは、生まれたばかりの赤ちゃんの股関節をみるのに使われています。MRIやCTのように特別な部屋が必要ではなく、赤ちゃんをあやしながら検査ができます。

このような放射線被曝がないという「安全性」やコミュニケーションをとりながらできる「同時性」というのがエコーの最大の利点です。

エコーを使った注射や麻酔

最近では関節や腱の中へ正確に注射するためにエコーを利用することが多くなってきました。以前は「ここら辺だろう」という形で注射していましたが、今はエコーガイド下で注射を行う医師が増えてきています。

手術の麻酔で、神経を麻痺させて痛みを感じなくさせるときにも、エコーを使いながら神経の周りに注射をするというのが一般的になってきています。

このようにより正確な注射を可能にするというエコーの特徴が注目されています。

エコーで病変をみながらピンポイントに足底腱膜へ注射してます。自分で自分を注射しました。

エコーを使った手術

この流れで、「手術中でもエコーを使いながら手術をすると正確ですよ」という報告が2010年代になってでてきました。

従来は大きな切開をあけて行っていた手術を、エコーを使うことによって、小さなキズでできますし、正確に行うことができます。

代表的な手術として、足首の靱帯修復(じんたいしゅうふく)術、足底腱膜炎やアキレス腱炎に対する手術、アキレス腱断裂の縫合(ほうごう)術が挙げられます。

このような足首まわりの手術は、体の表面に近いところにターゲットがありますので、エコーでのアプローチが容易なのです。

足首の靱帯修復(じんたいしゅうふく)術

スポーツで起こるケガでもっとも多いのが捻挫です。捻挫がほったらかしにされると、靱帯が緩んでしまします。靱帯が緩んでしまうと、捻挫を繰り返すようになり、軟骨を痛めてしまうことがあります。

従来は緩んだ靱帯に対して、中指ぐらいの長さ(7-8cm)くらいの切開を入れて、靱帯を縫い縮める手術が行われてきました(アメリカでは標準的な術式であります)。

現在はエコーを使って爪先ぐらいの切開(5mm)で同じ手術を行うことができます。時間も30分程の短時間の手術で、体への負担が少ないため手術後の痛みも少ないです。

足底腱膜炎やアキレス腱炎に対する手術(テネックス)

かかとや足首周りの痛みの原因として多いのが足底腱膜炎(そくていけんまくえん)やアキレス腱炎(けんえん)です。

これらに対して、従来は大きな切開を入れて、腱を切る手術を行ってきました。現在アメリカではエコーをつかって爪先ぐらいの切開(5mm)で、傷んだ部分だけをピンポイントに除去(お掃除)するテネックスという道具を使った手術が行われており、手術後の成績もよいと報告されております。

効果のメカニズムとしてはお掃除した部分から腱が新しく再生すると言われています。

時間は15~30分程度の短時間の手術で痛みも少ないです。2021年11月から日本でも使えるようになる見込みです。

アキレス腱縫合(ほうごう)術

アキレス腱断裂も頻度が高いケガです。

日常的に運動をするような方では手術して治すことが多いですが、従来の手術では大きな切開を入れて腱を縫合していたため、「手術のキズが痛い」とか「神経を痛めてしまった感覚がなくなった」といった訴えをしばしば耳にしてきました。

それに対して現在はエコーを使って小さなキズでアキレス腱を縫合することができます。神経もエコーで確認できるので、手術後に神経の症状がでてしまうこともなくなりました。時間は30分程度の手術で、痛みも少ないです。

小さなキズでできる手術でいうと、関節鏡や内視鏡というカメラをつかった手術の方がよく知られていると思います。カメラをつかうことで関節の中や腸管の中の病変を、皮膚に大きな切開をつけることなく処置することができます。

たしかに、体の深い部分に位置する関節の奥の方や腸管の中はカメラの方がアプローチしやすいかもしれません。

しかしながら、体の表面に近いところにターゲットがある場合は、関節鏡よりもエコーの方がアプローチがしやすいと自分は感じています。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。