スポーツ復帰時期
スポーツドクターをやっていてスポーツ現場から求められるのはいつ頃復帰できるかという問いに対するクリアな答えです。
ケガには一回の大きな負荷で起こる「外傷」と繰り返しの負荷でおこる「障害」があり、受傷部位によっても重症度によっても経過が異なります。
いつ復帰できるかというのを予測するのは簡単ではありません。ただし、これらをクリアできれば復帰できますよという段階はありますので以下にて説明します。
段階その1.損傷した組織が元の形に近いところまで回復していること
急性の足関節外側靭帯損傷を例にとります(これは繰り返しの動作によるケガである「障害」とは異なります)。
まず靭帯が引っ張られて腫れているだけ(軽症)か、部分的な損傷(中等症)か、完全な断裂や骨から剥がれたような損傷(重症)なのかを見分けます。
軽症や中等症ならば、患部をギプスにより固定したり、装具により動きを制限したりすることで、靭帯が元の形に近いところまで回復することを助けます。
個人差もありますが、回復までは少なくとも2週間程度を要します。
損傷した組織が回復する際の一つの尺度は痛みです。自発的な痛みや患部に触れたときの痛みが消失していれば良好な組織の回復の目安となります。
段階その2.機能が回復していること
損傷した組織が回復するのを待つ間に、機能(動き)の回復にもアプローチしていきます。
受傷した最初の段階から患部にもOptimal Loading(適切な負荷)をかけていきます(前回のブログ参照してください)。
例えば足関節の靭帯損傷であれば、医師や理学療法士の指導のもとに患部を動かす可動域訓練を早期から行います(自己判断ではやらないようにしましょう!)。
また患部以外の部分の身体機能が落ちてしまわないように、動かせる部分は積極的にトレーニングを行います。
例えば足関節の損傷であれば、上半身・体幹・臀部のトレーニングは継続し、バイクを漕いだり泳ぐことによって有酸素運動も続けます。
また、そもそもケガをした原因となった身体の動かし方のクセを治します。
足関節の靭帯損傷であれば、足首の外側を走る腓骨筋や中殿筋といわれる臀部の筋肉を使えなかったり、バランス感覚の源である固有覚が低下していることが多いので、それらの機能を回復させます。
段階③競技スキルの回復
競技スキルを回復する練習を行うのに必要なのは、段階②に含まれる
1.可動域訓練によって患部の関節の動きが回復していること
2.患部周囲の筋力が回復していること
3.バランスが回復していること、です
以上が整っていれば、低い負荷から競技スキルの練習を再開していきます。
足関節の靭帯損傷ならば、サポーターを付けた状態でのジョギングから再開し、ランニング、加速走、スプリント、カッティング動作へと進んでいきます(痛みがあれば前の段階に戻ります)。
カッティングができれば全体練習への復帰が可能です。
さらに競技スキルの練習によって、
①スキルを取り戻し、
②有酸素運動がしっかりできて、
③心理的にも復帰できる準備が整えば(ケガの再発への恐怖感を克服できている)、試合への復帰となります。
最後まで読んでいただいてありがとうございます。